添え字ザクザクな、クリストッフェル記号について、いくらか考え方がわかってきたのでメモしておく。

さて、いま曲線や曲面といった、ある滑らかなN次元の幾何学的対象(=可微分多様体)上において、パラメータ$ q^1, q^2, \cdots, q^N $ で局所座標 $ {\bf r} = {\bf r}(q^1, q^2, \cdots, q^N) = {\bf r}({\bf q}) $ が定まると仮定。

よくある定義では、この多様体上での計量テンソル $ g^{ij} $ を
\[ g^{ij} = \frac{\partial {\bf r}}{\partial q^i} \cdot \frac{\partial {\bf r}}{\partial q^j}
\] で定めたときに、第一種クリストッフェル記号は
\[ \Gamma_{ijk} = \frac{1}{2} \left( \frac{\partial g_{ij}}{\partial q^k} + \frac{\partial g_{ki}}{\partial q^j} - \frac{\partial g_{jk}}{\partial q^i} \right)
\] また、第二種クリストッフェル記号は
\[ \Gamma^i_{jk} = g^{i\ell} \Gamma_{\ell jk} = \frac{1}{2} g^{i\ell} \left( \frac{\partial g_{\ell j}}{\partial q^k} + \frac{\partial g_{k \ell}}{\partial q^j} - \frac{\partial g_{jk}}{\partial q^\ell} \right)
\] となるが、正直これでは全然意味が分からない。計量テンソルの偏微分の和で与えられる何かという以上の意味が見出しずらい。

それに対して一種クリストッフェル記号では、次の定義式もある。 
\[ \Gamma_{ijk} = \frac{\partial {\bf r}}{\partial q^i} \cdot \frac{\partial {\bf r}}{\partial q^j \partial q^k}
\] ここで座標系 $ (q^1, q^2, \cdots, q^N) $ における $ i $ 成分の単位ベクトルというのが $ {\bf e}_i = \partial {\bf r} / \partial q^i = \partial_i {\bf r} $ であることを使う。すると次の式が得られる。
\[ \Gamma_{ijk} = \partial_i {\bf r} \cdot \partial_j \partial_k {\bf r} = \partial_j {\bf e}_k \cdot {\bf e}_i
\] これはクリストッフェル記号 $ \Gamma_{ijk} $ は、$ k $ 方向の単位ベクトルを $ j $ 方向に微分したベクトル $ \partial_j {\bf e}_k $ を考え、それを $ i $ 方向への写し取った正射影した値だといえる。つまり、クリストッフェル記号とは、微分される単位ベクトル、それを微分する方向、正射影をとる方向の3種のベクトルについて、単位ベクトルの可能な組み合わせてすべてをまとめたものになる。確かにこれは便利だが、変形した第二種はより使いやすい形になる。

この両辺に $ {\bf e}_\ell $ をかけて、かっこを取り直すと
\[ \Gamma_{ijk} {\bf e}_\ell = \partial_j {\bf e}_k ( {\bf e}_i \cdot {\bf e}_\ell )
\] となるが、計量テンソルの定義から $ {\bf e}_i \cdot {\bf e}_\ell = g_{i\ell} $ であり、その逆行列は $ g^{i\ell} $ であることから
\[ \Gamma_{ijk} {\bf e}_\ell = \partial_j {\bf e}_k g_{i\ell}
\] \[  g^{i\ell} \Gamma_{ijk} {\bf e}_\ell = \partial_j {\bf e}_k
\] また $  g^{i\ell} \Gamma_{ijk} = \Gamma^\ell_{jk} $ だから $ \partial_j {\bf e}_k = \Gamma^i_{jk} {\bf e}_i $ になる。これも式を見た通り、ある単位ベクトルのある方向微分を、単位ベクトルの線形結合で表したとき、その展開係数が第二種クリストッフェル記号の持つ意味になる。

一般に曲がった空間の基底ベクトルはその空間の各点で向きが異なるから、違う点でのベクトルを比べようとすると、いろいろ厄介になる。この基底ベクトルの向きの変化を捉えるため、基底ベクトルの種類、変化させてみる方向、実際に変化する向きとを網羅した表にまとめる必要がある。それがクリストッフェル記号の役割のようだ。まあ、すでにベクトルで展開した形になってるので、第二種のほうがよく見かけるのも、当然といえば当然か。添え字三つあるのも納得!

こういうわけで単位ベクトルの方向微分の対する依存性を考えるべきところでは、このクリストッフェル記号がわらわら出てくるらしい。特に共変微分や接続、平行移動の定義もこれを踏まえると見通しがずっと良くなる気がする